数学基礎論サマースクール2023
概要
数学基礎論サマースクールは, 数学基礎論の各分野における基本的概念や最近の結果を広く紹介することを目的として,毎年夏に開催されています.2023年のサマースクールのテーマは「計算論」です.
日時・会場
- 開催日時:2023年9月11日(月)〜15日(金)
- 開催場所:明治大学駿河台キャンパス(アクセスマップ)リバティータワー8階1083教室
- 住所:〒101-8301 東京都千代田区神田駿河台1-1
- 最寄り駅
- JR「御茶ノ水駅」(JR東京駅から中央線快速で約5分。下車後、車両先頭付近の西口改札を出て、川と反対方向へ坂を降りる。)
- 東京メトロ 丸の内線「御茶ノ水駅」
- 東京メトロ 千代田線「新御茶ノ水駅」B3出口
- 都営地下鉄 新宿線「神保町駅」A5出口
- 対面のみ.リアルタイム配信はありません.一部の講師は期間限定で録画の配信を行います.
- 参加費:無料,旅費の補助はありません.
- 幹事:宮部賢志(明治大学),木原貴行(名古屋大学)
- 連絡先:宮部賢志,research@kenshi.miyabe.name
参加登録
人数把握のために参加登録をお願いします.参加登録は必須ではありません.参加登録していなくても当日参加できます.
登録一次締切:9月8日(金)23:59
締め切り以後も順次受け付けますので,随時登録してください.
参加登録は締め切りました.
懇親会
日時:9月14日(木)17:30〜
懇親会場所:リバティータワースカイラウンジ暁17階
立食での懇親会を予定しています.
参加費 学生:3000円,教員:5000円
登録一次締切:9月3日(日)23:59,可能な範囲でこのときまでにお願いします.
最終締切:9月8日(金)昼12:00
懇親会の登録は締め切りました.以降の追加およびキャンセルについては,宮部までメールで連絡してください.
テーマ
連続体上の計算論
スケジュール
時間/日 | 9:30〜10:30 | 10:45〜11:45 | 13:30〜14:30 | 14:45〜15:45 | 16:00〜17:00 |
---|---|---|---|---|---|
1日目・11日(月) | - | 鈴木 1 | 鈴木 2 | 宮部 1 | 宮部 2 |
2日目・12日(火) | 鈴木3 | Thies 1 | Thies 2 | 宮部3 | de Brecht 1 |
3日目・13日(水) | 宮部4 | Thies 3 | de Brecht 2 | de Brecht 3 | 木原 1 |
4日目・14日(木) | 宮部5 | 木原 2 | 木原 3 | Thies 4 | Thies 5 |
5日目・15日(金) | 木原 4 | 木原 5 | de Brecht 4 | de Brecht 5 | - |
現時点での予定です.変更の可能性はあります.
講師
鈴木登志雄:計算論速習(Turing機械,停止問題,算術的階層)
宮部賢志:実数の計算可能性
Holger Thies:実関数の計算可能性・計算量
Matthew de Brecht:計算可能位相空間論
木原貴行:実現可能性理論/計算可能数学の圏
すべての講演は日本語で行います.
内容
鈴木登志雄「計算論速習」
計算論の初歩的な事項をおさらいします。
- Turing機械(帰納的関数、述語と制御構造、Turing機械とTuring計算可能関数、帰納的関数を計算するTuring機械)
- 停止問題(機械の番号付け、クリーネの標準形定理、パラメータ定理、停止問題)
- 算術的階層(r.e.集合、r.e.完全集合、相対的計算可能性、算術的階層)
参考資料:
「 計算可能性理論(序)」
「計算可能性理論(第 I 部 計算可能性)」
宮部賢志「実数の計算可能性」
解析学の多くの計算において,有理数や代数的数,e, πなどを組み合わせた数しか出てこない.にも関わらず,実数論を構築するときには,連続性の公理を使って抽象的な数を考える必要がある.本講義では計算可能実数を定義し,計算可能実数でできること・できないことを示す.例えば,計算可能実数の集合は実閉体になることを示す.また,極限計算可能実数や弱計算可能実数を定義し,これらも良い性質を持つこと,階層を成すことなどを示す.
講義スライド1, 講義スライド2, 講義スライド3, 講義スライド4
講義中に演習問題を課す.演習問題答案アップロードは締め切りました.
講義動画の公開は終了しました.
Holger Thies「実関数の計算可能性・計算量」
計算可能実数の定義に基づき、計算のモデルを実関数に拡張します。 計算可能な実数関数のいくつかの特徴と性質を示します。 実数に対する計算可能な作用素と計算不可能な作用素の例を提示します。 さらに、実関数の計算量について論じます。 まず、P-NP問題などの離散複雑性理論の基本的な概念を復習します。 次に、実関数の複雑性を離散複雑性の問題と関連付けるKoとFriedmanのアプローチを 紹介し、例えば、滑らかな関数の最大化がP-NP問題に相当することを示します。
講義スライド1, 講義スライド2, 講義スライド3, 講義スライド4
Matthew de Brecht「計算可能位相空間論」
位相空間論は幾何学の抽象化した分野とみなされることが多いが、理論計算機科学の観点では、位相空間論は数学的対象の情報構造を研究する分野である。特に、実数のような非離散的対象上の関数を計算するためには、計算機が処理できる有限的情報で近似する必要がある。近似の方法により対象上の位相構造が決定されるが、その位相構造が対象上の関数の計算可能性に強く影響する。本講義では、このような数学的対象上の位相構造と計算可能性の関係を紹介する。
木原貴行「実現可能性理論/計算可能数学の圏」
このサマースクールのテーマは,連続体上の計算論です.そのような理論を展開するためには,計算可能性の概念がどのように連続体上に拡張されるかを検討する必要があります.本講義では,実現可能性理論という分野に基づくアプローチを紹介します.この分野は,直観主義自然数論の計算的解釈を起源としますが,解釈の範囲は徐々に拡張され,自然数論のみならず,解析学や集合論の計算的解釈も与えられるようになりました.この意味で,実現可能性理論は様々な数学体系の計算論的なモデルを与え,つまりは計算可能数学の世界を描きます.本講義では,まずは理論の展開に必要な,圏に関する基本概念を具体例を交えて丁寧に導入し,この言葉を用いて,計算可能数学の基礎について解説します.