「予測不可能性」の数学的定式化 〜確率モデルを使わない方法〜

履歴
2014年5月13日 アブストラクトアップロード

タイトル
「予測不可能性」の数学的定式化 〜確率モデルを使わない方法〜

アブストラクト
Kolmogorovの確率の公理に基づく確率モデルの有用性は疑問の余地がない.
しかし,確率モデルでは解析できないこともある.
いくつか例を挙げれば,
(1) 確率モデルを考えることが不自然な場合(決定論的力学系)
(2) 如何なる意味でのランダム性がどの程度必要かを調べたい(乱数,暗号,乱択アルゴリズム)
(3) 計算という概念との関係を調べたい(統計,機械学習)
(4) 確率という概念そのものを調べたい
このような場合は,予測不可能性に対する新たな見方が必要になる.
本講演では,その見方の一つとして,ゲーム論的確率論を紹介する.
ゲーム論的確率論は,Kolmogorovらによるアルゴリズム的情報理論,
von Misesによる頻度論の確率論,PascalとFermatのやり取りのうちPascalの方法
などの考え方を引き継いでいる.
講演は3部構成で,
I. ゲーム論的確率論入門(大数の法則の証明)
II. ゲーム論的確率論の使い方(歴史,哲学,特徴,応用)
III. ランダムの概念について(今後の展望)
の予定である.

種類
口頭発表
語ろう「数理解析」
京都大学工学部総合校舎 213講義室 (2階)(正門に近くの53番の建物)
15:00からエンドレスで

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Algorithmic randomness over general spaces

履歴
2014年5月出版
2013年12月受理
2012年5月改訂版を準備中
2011年9月改訂版を投稿
2010年5月25日ジャーナルに投稿中

タイトル
Algorithmic randomness over general spaces

種類
論文

ジャーナル
Math. Log. Quart. 60, No. 3, 184–204 (2014)
DOI 10.1002/malq.201200051

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プレプリント

確率の哲学

待ちに待った『確率の出現』の出現の日本語訳が出版された.
この本は私の確率に対する立場を構築する上で最も大きな影響を与えた本と言って良いと思う.
この機会に,私が重要だと思う確率の哲学の本を上のページから何冊か挙げてみたいと思う.
私は哲学者ではなく,この話題ばかり考えているわけではないので,おかしなことを言うこともあると思う.
是非,議論してもらえるならば有り難いと思う.

とりあえず,確率の哲学を考える上で,最低限読んでおかなければならないものとして,
『確率の哲学理論』ドナルド・ギリース 2004 日本経済評論社
『確率の哲学的試論』P.S.ラプラス 1997 岩波文庫(特に最後の役者による解説)
しかし,私が考える確率は,これらの枠組みには当てはまらないので,
哲学者に最低限の知識があることを分からせる,
哲学者以外の人に説明するときのために参考にする,
という使い方をしている.

確率の哲学を学ぼうとすれば,次に読むのは,
『科学と証拠』 エリオット・ソーバー 2012 名古屋大学出版会
『異端の統計学ベイズ』 シャロン・バーチュ・マグレイン 2013 草思社
などの科学哲学や統計学,ベイズ系の本だと思う.
これらの本を計算およびKolmogorov複雑性などを頭に置きながら読むと,
いろいろと違和感を感じると思う.

そこで,次に読むのは,実際に確率という概念がどのようにして生まれたかという歴史の本.
『確率論の黎明』 安藤洋美 2007 現代数学社
基本的な部分はこの本に載っているが,数学的な部分との関連があまり書かれていない.

そうこうしているうちに,ゲーム論的確率論を作った一人,Gleen Shaferの論文等から,
Hackingの”The Emergence of Probability”を知った.
私がこれまで読んだ本の中では,確率概念の誕生時期の,数学的,歴史的経緯が最も詳しい本で,
この本を読んで私の確率的立場が定まったと言ってもいいくらい影響力があった.

こうやって,自分の中にある「確率」の概念を壊した後で,
Solomonoffの晩年の論文2本を読めば,すっきりと理解できると思う.

量子力学の確率の概念も面白いと思うが,そこまでのカバーはできていない.
医学系や,リスク論,意思決定論などにおける確率の概念も面白いと思うが,
数学から離れすぎていて,私の仕事ではないと思う.